役員の訴訟リスク
2016年9月1日に医療法人制度の見直しの一環として、「医療法」が改正、施行されました。今般改正された医療法のなかで、医療法人の運営にあたる理事、監事および評議員等の責任が明文化されました。また、医療法人社団については、会社法における株主代表訴訟制度にならい、社員が役員(理事および監事)の責任を追及する社員代表訴訟制度が導入されました。
この改正により、役員の皆さまは会社法上と類似の義務と責任を負担することとなり、
訴訟リスクを懸念されるが故に積極的、独創的な運営判断がなされないこととなれば、貴法人のさらなる発展や活性化が妨げられることにもなりかねません。
役員の訴訟リスク
会社役員の経営にかかわる多くの大きな責任
- 法人に対する義務
- ・善管注意義務
- ・利益相反取引回避義務
- ・忠実義務
- ・報告義務
- ・競業避止義務
- 第三者に対する責任
- ・一般の不法行為責任
- ・医療法上の特別責任
法人に対する義務
- 善管注意義務(医療法46条の5 4項)
- 理事、監事として、それぞれの立場において、その地位にある者ならば当然と考えられる注意を尽くさなければならない。
- 忠実義務(医療法46条の6の4)
- 理事として法令、定款(財団法人の場合は寄付行為)、社員総会決議(財団法人の場合は評議員会決議)を遵守して、医療法人のために忠実に業務を遂行しなければならない。
- 競業避止義務(医療法46条の6の4)
- 理事がやむを得ず競業取引を行う場合には、事前に理事会の承認を得なければならない。
- 利益相反取引回避義務(医療法46条の6の4)
- 理事がやむを得ず利益相反取引を行う場合には、事前に理事会の承認を得なければならない。
- 報告義務(医療法46条の6の3)
- 理事は、医療法人に著しい損害を及ぼすおそれある事実があることを発見した場合には、その事実を報告しなければならない。
- 義務が果たせない場合
- 社員代表訴訟が提起される可能性(医療法人社団の場合)
医療法人から訴訟が提起される可能性
第三者に対する義務
- 一般の不法行為責任(民法709条)
- 故意または過失により他人の権利を侵害した者はその損害を賠償しなければならない。
- 医療法上の特別責任(医療法48条)
- 理事、監事および評議員がその職務を行うにあたり悪意または重大な過失があった場合、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
- 義務が果たせない場合
- 第三者訴訟が提起される可能性
役員を取り巻く訴訟リスク
役員に対する訴訟は主に次の3つに分類されます
- 社員代表訴訟(医療法人社団の場合)
- 社員代表訴訟とは、医療法人社団の役員が善管注意義務や忠実義務に違反し医療法人社団に損害を与えた場合に、社員が医療法人社団に代わって医療法第49条の2を根拠として役員に対して損害賠償を求める訴えを提起するものです。
- 会社(法人)訴訟
- 会社(法人)訴訟とは、医療法人の役員が善管注意義務や忠実義務に違反し医療法人に損害を与えた場合に、医療法人が医療法第47条を根拠として役員に対して損害賠償を求める訴えを提起するものです。
- 第三者訴訟
- 第三者訴訟とは、医療法人の役員が故意・重過失等によって第三者(取引先等)に損害を与えた場合に、第三者が民法や医療法第48条を根拠として役員等に対して損害賠償を求める訴えを提起するものです。
『会社役員賠償責任保険(D&O保険)』による備えが必要です!
事故が起こった場合の損害(損害賠償金・争訟費用)に
備えるのみならず、